2013年4月17日水曜日

Jakuchu's here!


先日、現在仙台市博物館で開催されている

特別展 東日本大震災復興支援
プライスコレクション 江戸絵画の美と生命
「若冲が来てくれました」へ行ってきました。
















平日にもかかわらず多くの人で賑わっていました。
各展示作品にはわかりやすい展示用タイトルがついておりキャプションも分かりやすかったです。最後の若冲ゾーンに行くまでに、思っていた以上に江戸絵画が盛り込まれていたので休憩しながら見ていきました。展示されていた中で気になった作品を何点か挙げます。

・栗樹猿猴図屏風 ― 作者不明
(クリの木であそぶ手長ザル)

他展示作品が写実的なものが多かったため、目に付いた作品。
墨絵で、子供の落書きのようなゆるキャラのような可愛さの手長ザルが描かれていました。

・秋草図―鈴木守一
(秋の草花)

描表装という手法が用いられている作品でした。
遊び心を感じられました。

・白象黒牛図屏風 ― 長沢芦雪
(白いゾウと黒いウシ)

今回の展示でキャプションに、対比、というキーワードが多く見られました。
特に個人的に白象黒牛図屏風は大きさ、色、位置などの対比を強く感じられる作品でした。

綴プロジェクト (正式名称:文化財未来継承プロジェクト)」という、
キヤノンの最新のデジタル技術と京都の伝統工芸の技を融合させ、オリジナルの文化財に限りなく近い高精細複製品の制作プロジェクトがあるそうなのですが、
その作品「白象黒牛図屏風」が展示会場を出たところに展示されていました。
いわばレプリカですね。
撮影許可済

















日本古来の貴重な文化財をデジタル一眼レフカメラで撮影し、そこで得られた高解像度なデジタル画像データにさらにキヤノン独自の高精度な色補正処理を施した上で、大判プリンターを活用して原寸大に印刷。これに、必要に応じて金箔や表装を施すなど、デジタル技術と伝統工芸を融合させ、オリジナルの文化財に限りなく近い高精細複製品を完成させます。(公式サイトより引用)






















噂の白い犬も近くで撮れました満足。

2013年4月8日月曜日

面(おもて)


仮面に関する本第二弾。
【面からたどる能楽百一番】

著者:三浦 裕子
発売日:2004年

能楽鑑賞のガイド本でした。
能楽における面の役割を知ることができます。
先日投稿した「民族の仮面」と重なるところも多かったですね。


▼能について
能は仮面劇。
能面・狂言面=能・狂言に使われる仮面

能面は変身の道具であり、それ以上の演出家に似た絶対的存在として、さらに高い芸術性を誇る美術品としての魅力を備えている。

能面が複雑にして多岐な役割を果たしているのは演者が信仰心に近い真摯な気持ちで面に向き合い、能・狂言を演じてきたから。

能面・狂言面は「かぶる」とはいわず「かける」といい慣らわすが、すべてを賭けるという意味に通じることが言われている。

最近では面の制作を楽しむ人が増え、使用される面を公演パンフレットなどに明示することが増加。

▼能面の用法と種類

◆能面の用いられ方
能で用いられる仮面は、能面あるいに面(おもて)という。

約60種類を揃えれば、現在240曲ある能のレパートリーの殆どを上演することが可能。

能では全て役柄に面を使うわけではない。
能面を霊力の宿る存在とみなす発想のもと、神仏・天人・仙人・草木の精・鬼神・亡霊・霊獣などの超人間的な役柄に用いる原則がある。

現実に生きる生身の人間の役柄には面を用いず、素顔で演じる。
このことを直面(ひためん)という。

◆面をかけた演技の効果
演者の心と演技とを一体化するのが、面であり、だからこそ表情が変わるはずのない面が、演者の心のうちに湧き上がる感情や意志を見せてくれる。

優れた面とは演者の人間性を引き出すものであり、優れた演者とは面を通して豊かな人間性をおのずと表明する。

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民族の仮面では、仮面=敬う対象のもの、
能面は仮面=霊力の宿る存在=変身の道具=美術品。
民族の仮面ではでてこなかった、美術品、というワードがでてきました。
若干意味合いが違うのでしょうかね。

そもそも能においては面(めん)ではなく面(おもて)と呼ぶそうで。
英語ではmaskの一言で表せますが、やっぱり日本語は複雑ですね。
海外の方に説明するときはなんといえばいいのやら。


面をかけた演技の効果、というのは民族の仮面と似ていますね。
面を着け(かけ)る、着け(かけ)ないの違いで個性の移行+心理的変化が見られるというのはとても興味深いです。


2013年4月5日金曜日

民族の仮面


仮面に関する本読みました。


【民俗の仮面】

著者:山内 登貴夫
発売日:1967年

貸出できなかったため図書館で読んできました。
日本の民族仮面研究本。

以下サマリー
▼仮面に見る、民族心理の探求。

仮面の裏側に息づく人々の心境や生活感覚を探っていく=仮面に見る、民族心理の探求

日本は特に仮面が多く、特徴・性格も様々に備えた国。
日本の仮面は、私達の祖先が更に祖先の住む遠い国の神を考えながら表した造形で、"神様が仮面という形に凝結"しているということ。

つまり、仮面は敬う対象のモノ。

神という抽象的にしか捉えられない私達にとって、"神"という存在を仮面を通して具体的に把握する認識の仕方は、私達の祖先が"神"をどのようにして意識して生活してきたかの道筋を知ることでもある。

▼仮面の形体を考える

生活の周りにある擬人化問題を任意してみる必要がある。

例)仏像、神像、門入道、おつかど棒、精霊人形etc...
神を人格化するための思索は、体の中でも頭部に殆ど多くの例が見られる。
自己の個性を最もよく表す顔を隠す意図があるように思われる。

▼神事芸能について

仮面の着けない時と、着けた時に現れる個性の移行は観客はもちろんのこと、その本人にまで異様な心理的変化を抱かせる。

例)日常では考えられない異常な力がでる。
→腰の曲がった老人も翁の仮面をつけることでしゃんと立ち直り長時間の舞を平気でやってのける。

巫女が神降ろしの祈祷で神がかりとなるのと同様に"仮面をつけることで出現した一種の興奮状態"と言える。


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我々の生活の中で聞く言葉には意外と仮面に関するものが多い、という指摘がありました。
面白い・しかめっ面・面黒い・面構えetc...
確かに。